h-3’s diary

趣味世界の独り言

空と地上の光が彩る山陰海岸の星空絶景

春から夏にかけての海越しの星空は、主に南岸エリアの太平洋が主役となります。

そして太平洋から星空の主役が去った10・11月の短い時期に、主役は日本海で登場。はくちょう座付近の天の川が見頃を迎えます。

 

ところが日本海側には「弁当忘れても傘忘れるな」の諺があるように、気持ちよく晴れる日が少ないのが星景撮影の泣き所でもあり難しさにもなっています。

また、前回触れたように漁り火や生活圏の明かりの影響もその難しさの一つです。

しかし、その難しさを差し引いても日本海の星空の魅力は素晴らしいものがあり、なんとかその魅力を捉えることはできないか?というのがこの秋のテーマでした。

 

そこで、ロケハンで撮影スポットを探索し、天気図のパターンから好天となりそうな日を選んで二度撮影に出撃したものの、諺の呪縛を思い知らされる結果でした、、、。

そしてついに訪れた「もうこれ以上は望めないほど申し分のない」気圧配置となった日。「もしこれで日本海の天気に泣かされたら、山陰での撮影からは撤退する」という、見切りをつける意味合いも含みつつ三度目の撮影にチャレンジ。

 

結果は絶好のコンディションという幸運に恵まれ、一晩で5箇所を移動しながらの撮影を堪能することができました。

 

 

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 まず最初の撮影地点に到着。

大阪を出発した時はどんよりした空模様でしたが、下道でのんびりこちらに向かう間に晴れ間が広がり、この時点でほぼ快晴を確信!

天文薄明ですから、見た目にはほぼ夜になってしまった感のある空も、写真ではこのように捉えられます。

飛行機の機窓から見る日没のように空のグラデーションが見えるのは、大気の薄い部分を照らす残照だからでしょうね。

大気の濃い部分を照らす日没直後の残照も好きですが、紺色の空が広がる海原に、橙色の差し色が徐々に弱まっていくあのピアニッシモのような天文薄明のニュアンスが好きです。

星撮りをする立場からすれば、「地球の陰に入ってきた」という高揚感もそこに加わるからなおさらですね。(笑)

 

 

 

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暮れると光の主役が地上の明かりに変わり、ガラリと光の趣が変わりますね。

雲があるのは前回の撮影時に撮ったものです。星を隠す雲も場合によっては味わい深い存在になりますが、撮影を始めるとどんどん雲が増えていきました、、、

この場合も、薄い雲が漁り火や地上光に照らされて美しいヴェールのようになりました。

 

 

 

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縦構図。 日本海の夜空の美しさがお気に入りの一枚です。

 

 

 

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これも前回撮影時のものですが、地上光に照らされた低い雲が立体感を感じさせてくれて気に入っています。しかしこのあと、、(以下省略)w

 

 

 

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もちろん秋晴れの日本海は申し分ありません。

秋にこの地域で快晴に恵まれることはとても幸運だそうです。

 

 

 

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晩秋の日本海を代表する星空は、低くなってすっかり中心部が隠れた秋の天の川です。

七夕の頃は頭上高く見上げた織姫・彦星も、こんなに低くなって撮影向きになります。

 

夏の大三角はくちょう座などを海越しに捉える構図は、日本海ならではの星絶景です。

 

 

 

 

 

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縦構図。

漁り火はとても明るいので星空撮影には不向きです。そのために日本海での撮影を敬遠する人もいるのですが、強い光と弱く繊細な光の両方の魅力を捉えるのは、星景撮影の表現を幅広くし、そして深めてくれると私は考えています。

 

ピアノやバイオリンの心に染み入るようなソロが素晴らしいように、メリハリの効いた交響曲のような、強弱様々な光の魅力が織りなす魅力も捉えられたらいいなと思っています。

 

 

 

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 とても小さな漁港です。

ロケハンで訪れた時に、この船と天の川の構図を見つけていたので撮影を楽しみにしていました。

漁船や港と星空の風景は大好きなのですが、強い光の問題が伴いやすい場所でもあります。これも、正面と背後からの光が強くて苦労しましたが、ほぼイメージ通り仕上がりました。正面上空にはアンドロメダ銀河が小さく写っています。

 

生活感のある日常風景と、2つの銀河が見える星空。この現実と非現実の極みのような対比感でそれぞれの味わいが引き立てあうお気に入りです。

 

 

 

 

 

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荒磯に立ち、ちょっと怖いほどのドスの効いた波音に囲まれながらの撮影。

でも荒々しくパワフルな海岸風景に対して、天空の星空は繊細で美しい音楽のようです。このアンバランス感極まるような対比に酔いしれました。

 

しかし砕ける波しぶきはミスト状となって風に乗って漂い、カメラもレンズも三脚も、そして近くに停めてある車にもミストが届いています。

こういう場所では短時間の撮影で切り上げる必要があり、慌ただしいのですが、焦っていると真っ暗闇の磯でつまずいたり三脚を倒したりなど、とんでもないアクシデントやトラブルに見舞われるリスクが高いです。

 

私はこういう場所で撮影するようになって、危険な作業に従事される方が、指差呼称したり神事を行ったりする理由が少し分かるようになってきました。

 

一番恐ろしいのは、奢りや馴れなんだと。

 

気持ちを引き締めて、自然から恵みを頂き、収穫に感謝する気持ちは、写真であっても同じだと思う次第です。

 

 

 

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前の画像と同じ場所ですが、カメラ位置と焦点距離(レンズ)を変えています。

この画像はFisheyeで、天の川が左から夏(一部)・秋・冬の部分へと連なり、日本から見える全体像に近い範囲を捉えています。ちなみに、夏が天の川銀河の中心部で、そこには2万個のブラックホールがあると言われています。冬は天の川銀河の端の方向を見ていることになります。

 

 

 

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 今回の一番のお気に入りです。

真っ暗で岩がごろごろある海岸ですが、まるで神様が宿っているかのような神々しさが感じられたので、Fisheyeから24mmまで、4本のレンズをとっかえひっかえして撮りました。

天の川がどんどん沈んでいくと、やがて繊細でサラサラとした冬銀河の領域になり、アンドロメダ銀河なども高度を下げてくるのですが、海にそそり立つ岩の厳かな雰囲気と申し分のない組み合わせ。

背景のオレンジがかった色は、日本海の遠いエリアの漁り火や遥か対岸の地上光あるいは大気光等の影響かと想像しますが、それらがピタリと美しくシンクロするタイミングで撮影できました。

夏の天の川の濃い部分は見栄えがして素晴らしいのですが、薄くて清らかな冬の銀河もこれまた宇宙の静寂感や神秘を感じさせてくれる魅力に溢れていました。